尾道市の民話(金の性根)・31

 今日は全国でもありそうな話をしようかのぅ。
 むかし、人はお金に性根(魂)があると信じていたんじゃ。
 大晦日の夜、雨戸の外にお金を置いて寝ると、金の性根が金色の馬になってやって来て、小判を置いていくと思っていたんよ。
 もしその馬が家の中まで入ってきたら長者なれると言い伝えられておったんじゃ。
 それで、みんな戸の外にお金を置き、楽しい思いをめぐらしながら大晦日の夜を過ごしておったんよ。

 ところが、時には戸外に置いていた自分のお金まで持っていかれることもあったんじゃ。
 そんな人はお金には縁が遠いんだと、あきらめておったんじゃ。

 浦崎の北垣地(きたかわち)家は、代々お医者じゃった。
 情け深い人で、貧しい人でもいやがらずによく診てやっておったんじゃ。
 「お医者さま、お金がのうて・・・」と言われても
 「いい、いい、お金なんか、そんなことを心配せんで十分養生しんさい」
 
 こんなありさまじやったんで、薬代ももらわずいつも貧しい暮らしをしておったんよ。

 ある年の大晦日の夜、このお医者さんもなんなと同じように、戸の外にお金を置こうと思ったんじゃが、お金なんて家中探してもどこにもなかったんじゃ。
 「ああ、来年もお金には縁がなさそうじゃな」
 お医者さんは、ため息まじりにつぶやくと、せんべい布団にもぐり込んだんじゃ。
 真夜中のことじゃった。
 北風が破れ戸をカタカタとたたく音で、お医者さんは目が覚めたんよ。
 と、どうじゃろう。
 外が黄金色に光っておったんじゃ。
 お医者さんが恐る恐る破れ戸から外を見てみると、なんとそこには金色の馬がたてがみをなびかせながら立っておったんじゃ。
 お医者さんはビッツクリして、思わず目をつぶり、手をあわせたんよ。
 金色の馬はしばらく止まっておったが、家の中には入らず、どこともなく立ち去ったんじゃ。
 
 それからというもの、お医者さんは少しづつお金持ちになっていったんじゃ。
 お金持ちになっても相変わらず情け深く、以前と同じように貧しい人々を診てやったんじゃ。
 金の性根が家の外に止まっただけじゃけぇ、大金持ちにはなれんじゃったが、情け深いという評判は人伝えに広がって、人々に尊敬されながら、中くらいの金持ちになったそうじゃ。
 (尾道民話伝説研究会発行尾道の民話・伝説」より)

 これで今日の話しはお終いじゃ。
 またの。

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