尾道市の民話(海を渡ったキツネ)・22

 今日はキツネの話をしようかの。

 昔からキツネもタヌキも、人間さんを化かすと云われるがのう。
 尾道にも「長池のキツネ」やら「巌通橋のキツネ」の昔話があるじゃろう。
 わしがずっと前に聞いた話なんじゃがそれをしようかのう。
 むかし、むかし海の向こうの四国には、キツネもタヌキもえっと(沢山)おったそうじゃ。
 むかしからタヌキは、おもに男に化けて、それも坊さんや武士によう化けたそうじゃ。
 そしての、キツネは女に化けるのが上手かったんじゃそうなが、それも若おうてべつぴんに化けるのがのう。

 むかし、四国のお城でのできごとじゃ。
 ある日殿様が奥方の部屋にやって来たら、なんと奥方が2人いるんじゃ。
 びっくりした殿様は、どっちが本当の奥方か目を大きく開けてしっかり見たじゃけど分からんかった。
 声をかけたら、2人とも私が本当の奥方ですと、同じ声で話すんじゃ。
 困った殿様は家来たちを呼んでのぅ、詮議をしたんじゃ。
 家来の一人がの、こりゃあキツネが化けとるに違いないと言い出したんじゃ。
 そこで、奥方を一人ずつ別の部屋に呼ぶことにしたんじゃ。
 一人目の奥方が呼ばれた。
 奥方は何事もなくいつものように、しずしずと廊下を歩いたんじゃ。
 次に二人目の奥方が呼ばれたんよ。
 こっちの奥方は、着物の前をちょっと持ち上げての、しずしずと廊下を歩きはじめたんじゃ。
 後に従っていた侍女がの、奥方の着物の裾を見て驚いたんよ。
 なんと着物の下から立派なキツネの尻尾がちらちらと揺れとったんじゃ。
 「ややや、キツネじゃ」と思うたが、家来たちの待つ部屋までは、黙って案内したそうなんじゃ。
 そうやって、とうとうキツネは捕らえられたのじゃ。
 そのキツネは、四国の頭目じゃったそうな。

 そしての、「こらえてください。もう決していたずらはいたしません。許してくださったら、一族を引き連れてこの四国から出て行きます」と言うたそうな。
 城の人達はの、いたずらキツネたちが出て行くと言うたんで、許してやったそうじゃ。
 じゃがの、すぐまた四国に戻ってこられたら困るんで、キツネに言うたそうじゃ。
 「もうこの四国には、キツネが住むことはあいならん。じゃがの、四国と本土の間に橋でも架かりゃ、戻ってきても良え」
 キツネはの、泣く泣く四国を出たそうな。 そして備後の鞆に上がったそうなんじゃ。その後は各地へ散らばったのじゃろうよ。
 尾道のいたずらキツネたちも、ひょっとしたら四国から来たキツネかもしれんのう。

 おおそうじゃ、この前というても10年位になるが「尾道から四国の今治に向けて橋が出来たんじゃたの。
 キツネにとっちゃぁ、約束の橋ができたけぇ、満月で明るい時に本土のキツネが四国へ戻っとるのが見えるかもしれんのう。
 (参考~尾道民話伝説研究会発行“尾道の民話・伝説”)

 これで今日の話は終いじゃ。またの。

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