尾道市の民話(光明寺の観音さま)・15

 今日はのぅ、ありがたい観音さまの話をしようかのぅ。

 光明寺にこまい(ちいさい)観音さまがおった(居た)んじゃがのぅ、この観音さまは、尾道でも古い仏さまの一つじゃと云われている有難い観音さまじゃ。
 この観音さまにゃあ、面白い話があるんよ。
 
 むかしむかしのことよ、この尾道にの、わりい(悪い)男がおってのぅ、光明寺の観音さはこまい(小さい)けど、金ピカに光っとりなさると聞いて、男はいっぺん観音さまを拝みに行こうと思うたんよ。
 ほんま(本当)は其の男、金ピカの方が気になっておったんじゃがのぅ。
 ある日其の男が光明寺に出かけたんじゃ。
 お寺参りの人に混じって、本堂に上がったんじゃ。
 ありがたい観音さまの前にゃぁ、お供えがえっと(たくさん)してあったんじゃ。
 「ほんまこりゃぁ、きれいな観音さまじゃ、それにこまいのぅ。これならわしのふところに入れられるじゃろう」
 男はのぅ、心の中でにんまりと笑うたんじゃ。
 さて、ある晩のこと、男はあの観音さまを盗んできちゃろうと思うて出かけたんよ。
 月もない晩じゃった、石段であっちこっちゴチンゴチンとあたりあたり、光明寺の庭にあがったんよのぅ。
 本堂はこっちじゃったがのぅと、迷いながら、やっと辿りついたんよ。
 「扉は開くかのぅ、鍵をかけられとったらいけんがのぅ」男は小まい声でブツブツ言うたんよ。
 ギギギィといなげな(おかしい)音がしてのぅ、扉が開いたんよ。
 「ヒェー、用心が悪いのぅ、じゃが、わしにゃぁええことじゃ」
 中に入ってみたら、ありがたい観音さまは、光っていなさった。
 「ああ、ありがたや、観音さま」
 男はのぅ、観音さまを抱き上げて、急いで懐に入れたんじや。そしてのぅ、ゆっくりとお寺の庭を門に向こうて歩き始めたんよ。
 ところがじゃ、一歩、一歩と歩くごとに、体が重とうなってきたんじゃ。
 「こりゃどうしたんじゃ、わしの体が重とうなってきょうる。」
 門のそばまで来たときにゃ、もう男は立っておられんので、這うようにしての。
 その時じゃ、男のふところから観音さまが転げ出なさったんじゃ。
 そしたら、男の体がいっぺんに軽うなったんじゃ。
 男は急いでの、観音さまを拾おうとしたんじゃが、なんと観音さまが重たいんよ。
 男はさげることができんかったんじゃ。
 「こりゃ、どうしたんじゃ。わしの体が重とうなったんじゃのうて、観音さまが重とうなったんじゃ。こりゃあ、こけぇ置いといて、誰か呼んでこう」
 そう言うと、男は帰っていったんよ。
 それからの、すぐに仲間を連れて、また光明寺に戻って来たんじゃ。じゃがのう、門のところにゃ、もう観音さまは転げちゃあおられんかった。
 「ありゃ、ここに観音さまを置いとったんじゃが、どこに行かれたんかのぅ」
 「お前、夢でも見たんか。もういっぺん本堂へ行ってみようや」
 男と仲間は、本堂へ行ってみたんよ。
 そしたらの、ちゃんと観音さまは本堂にいなさったんじゃ。
 「ほれみい、観音さまを盗んだ夢でもみたんじゃろう。こんだぁ、わしが連れて帰るけぇ」
 仲間の男は、そう言うと、観音さまを抱かえ込んだんよ。
 そして、二人して急いで門に向うたんよ。
 じゃが、ちいと(少し)歩くと重とうなったんよ、観音さまがのぅ。
 だんだん重とうなって、門のところまでくると、もう二人でも抱かえられんようになってしもうたんよ。
 「ええい、しょうがない。今日はやめじゃ」
 二人はあきらめて帰ったということじゃ。
 それからはのう、この観音さまは、何回連れ出されそうになっても、光明寺から出られることはなかったということじゃ。
 観音さまはこの光明寺が、お好きなんじゃ思うんよ。

 これできょうの「光明寺の観音さま」の話は終りじゃ。
 続きは、また次にしようや。

 (参考~尾道民話伝説研究会発行“尾道の民話・伝説”) 

http://webryalbum.biglobe.ne.jp/myalbum/201346000c1e5dcdc83e1202942ffab118c63f430/81812410680610221



 

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