尾道市の民話(巌通橋のキツネ)・17

 この前は狸の話をしたけぇ、今日はキツネの話をしようかの。

 明治の中頃のことじゃ、栗原川の河口に巌通橋ができたんじゃが、それまで橋がなかったもんですげえ(大変)便利になったんじゃ。
 それまではの、西の吉和へ行くんは、竜王山の麓の七曲りの坂道を通っていたんよ。
 巌通橋のいわれはの、がんつう(カニ)がぎょうさん(沢山)いたけぇとか、大きな岩を砕いて橋を架けて人が通れるようになったけぇとか云われとったんよ。
 この橋の近くに悪いキツネがおって(居て)の、通る人をよくたぶらかしていたそうじや。
 人家も遠く、夜は大人でも気持ち悪いけぇ通らんようにしとったんよ。
 ある日、錨職人の一人が、鍛冶屋町のふいご祭り(11月8日)の余興に奉納する浄瑠璃や能などの打ち合わせのため、吉和の友人宅へ出かけたんよ。
 話が長ごうなって帰りが遅そうなったんじゃ。
 友人に「提灯」をと言われたんじゃが、ことわっての星もまばらな夜道を、巌通橋にさしかかったときは、もう真夜中近くになっとったんよ。
 その時にの、どこからともなく夜目にはっきりと、きれいな若い女の人が現れて来たんじゃ。
 そしての「もし、お兄さん、どこまで行ってんですか。わたしゃ尾道の本町までいくんですが、暗うて一人じゃ気味が悪いけぇ、すみませんが一緒に連れて行ってつかぁさい」と頼んだんよ。
 大男で力自慢の錨職人は、日ごろから、この巌通橋には悪いキツネが出て、通る人にいたずらをするという話を聞いとったんで、暗いのに着物の柄などがハッキリきれいに見えるんで、キツネが化けていると分かったんじゃ。
 よしこの際、化かされたと思わせ、ひとつキツネをとっ捕まえてやろうと考えての、何食わぬ顔で「わしも、鍛冶屋町まで帰るんじゃ。若い女の夜の一人歩きはぶっそうじゃけんのぅ。わしが連れて行ってあがんしょう」
 と一緒に歩き出したんよ。
 しばらく歩いていると女が
 「そんなに早よう歩かず、もうちょっとゆっくり歩いてつかあさい」
 と言うたんじゃ。
 「わしゃ、早よういなにゃー(帰る)いけんけぇ、あんたを負うていってあぎゃんしょう」
 と錨職人は言い、女を背負うと、ちょうど上手い具合に落ちとった縄で逃げんように縛りつけたんじゃ。
 「これでしめたもんじゃ、もう捕まえたと同じことじゃ。みんなに自慢できるぞ」
 職人は嬉しくなって、跳ぶように鍛冶屋町の入口まで帰ったんじゃ。
 そして背中の女に話しかけたんじゃが、何の返答もなかったんじゃ。
 今まで一生懸命走っておったんで、気がつかんかったんじゃが、振り返って見るとの、大きな切り株じゃたんじゃ。
 錨職人は、切り株を地べたに叩きつけ、地団太を踏んで、悔しがったそうじゃ。

 これで「巌通橋のキツネ」の話は終いじゃが、昔の人はタヌキやキツネに、よう騙された云うとったが、気をつけんといけんのぅ。
 続きはまたのぅ。
 (参考~尾道民話伝説研究会発行“尾道の民話・伝説”)

 

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