尾道市の民話(小豆とりの狸)・16

 今日は狸の話をしようかの。
 そゃじゃのぅ、今から百数十年前のことじゃが、尾道の海岸線は今よりずっと北に入り込んでいたんよ。
 そしてのぅ、東は久保町から、西は一番踏切(土堂踏切)のあたりまで、波打ち際は石の護岸じゃったそうなんじゃ。
 土堂町の蒲鉾屋で桂馬さんのところは当時船着場じゃった。
 あのあたりは石畳になっとっての、西側には海沿いに大きな蔵が並んで建っていたそうなんじゃ。
 そうしての、当時は本通りの賑やかな商店街ものうて(無かった)の、勿論電灯なんか無い時代じゃった。
 そういうことで、こわい話や不思議な話がぎょうさん(沢山)あるんじゃ。

 その頃、蔵の近くで毎晩「シャリ、シャリ」と高こうてするでぃ(鋭い)音がしてきたんじゃ。
 ネズミが走り回る音とも違うし、イタチが騒ぐ音とも違うし、みんなすげえ(大変)気味悪がっておったんじゃ。
 ある晩のこと、一人の若者が用があって遅くにその蔵の側を通りかかったんよ。
 するとのぅ、皆んなが言うとったような「シャリ、シャリ」という音が蔵のあたりから聞こえてきたんじゃ。
 若者は半分は怖かったけど、半分は何の音か確かめてやろう思って、ソット蔵に近づいたんじゃ。
 蔵の中から「シャリ、シャリ」と音がしているんじゃ。
 若者はのぅ、蔵に向って「わぁー」と大きな声を出したんじゃ。
 とたんにのぅ、音が止んで蔵の穴から真ん丸いものが飛び出して来たんじゃ。
 若者はびっくり仰天し、腰が抜けそうになったんじゃ。
 それでも走って逃げているものを見ると、千光寺山の方へ短い足で去って行くのが分かったんじゃ。
 若者がその姿を良く見ると、狸のようじゃった。
 それからはのぅ、その「シャリ、シャリ」という音は、狸が蔵の中の小豆を狙って来ていることが噂になったという事じゃ。
 でものぅ、やはり気持ちが悪うて、暗い夜に「シャリ、シャリ」という音がするとの、子供らは急いで家に帰るようになったそうじゃ。

 これで「小豆とりの狸」の話は終(しま)いじゃ。
 続きはまた次にしようや。
  (参考~尾道民話伝説研究会発行“尾道の民話伝説”)


                    石畳小路(蒲鉾・桂馬)
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