尾道市の民話(千光寺の玉の岩)・4

 
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 ぬばたまの夜は明きぬらし玉の浦に
       あさりする鶴鳴(たず)き渡るなり
と、古歌にもうたわれているように、尾道は『玉の浦』と呼ばれていたんじゃ。
 この名の由来に次のような伝説があるんよのう。
 ずっと、ずっとむかしの話じゃ。
 千光寺山は、昔から大きな岩がぎょうさん(たくさん)あるところじゃ。
 今でも叩くとポンポン音がする「鼓岩」や大きな亀が首をのばして下の道を見ようる「亀の岩」など大きな岩があるんよ。
 その中でも目だって大きな岩は、千光寺本堂のそばにあって、岩のてっぺんに電気が点いとる「玉の岩」と言われとる岩じゃ。この岩の上にゃのぉ、むかしはなんと光る玉があったんじゃそうな。
 きれいな玉でのう、よう光りょうたんよ。
 その光はその近くにある大岩の鏡岩に反射してのう、海を照らして遠くの島へ行き交う船の安全を見守っていたんよ。
 ある月の細い晩じゃった。
 この尾道水道に一艘の船が入って来たんじゃ。
 「うわぁ、光ってるぞ。ほんまによう光る玉じゃのう。海まで明るうなっとるぞ」
 「はよう あの玉を貰いに行こうぜ」
 そう言うと船乗りたちは船を急がせたんよ。
 そして船を降りると、険しい山道を上って岩までやって来たんじゃ。
 「なんと大きな岩だ。これは岩ごと持って帰られそうにゃないのう。玉だけなんとかとりたいものじゃ」
 「とにかく寺の和尚さんに譲ってもらうよう頼んでみようやぁ」
 次の日、船乗りたちはお寺にでかけたんじゃ。
 むかしゃのぉ、寺も小もうて(小さい)、和尚さんが一人住んどっただけなんじゃ。
 「実は、私どもは遠い国から、この珍しい光る玉を求めてやってきものです。お金は十分用意しています。どうか、この玉をゆずってくれませんか」
 船乗りたちは、和尚さんにたのんだんじゃ。
 「とんでもないことじゃ、この玉はのぉ、町の宝じゃ。見てみい、よう光りょうろうが。この岩と玉はのぉ、海と船の安全を見守ってここに立っていなさる神様の岩じゃ。だれにも渡すことはできんのんじゃ。」
 和尚さんははっつきりことわったんじゃ。
 じゃけどのぉ、船乗りたちは、どうしてもその光る玉がほしかっつたんじゃのう。岩の上の玉だけは、なんとかしてとっちゃろうと考えたんよ。
 そして夜の来るのをまって岩にはしごをかけのぉ、コッチン、コッチンと削りはじめたんよ。ほいでとうとうてっぺんから玉を切り取ってしもうたんじゃ。
 船乗りたちは、
 「おお光っつてる、さぁ急いで国へ持ち帰ろう」
 そう言うと、船に急いだんよ。でもの、あんまり急いだもんじゃけぇ、玉は船乗りの手から転げ落ちたんじゃ。
 そうしての、深い海に沈んでしもうたんじゃ。
 それからのち、てっぺんを削られた大岩はのぉ、光る玉がのうなって真っ暗じゃ。和尚さんも町の人も船もみんな困ったんじゃ。
 そこで夜になると、大岩の上で火を焚くことにしたんじゃ。
 尾道の港に出入りする船のためにのぉ。
 それが、今はほらあのとおり、電気で三色にかがやく玉が岩につけられての、人々を楽しませてくれとるんよ。
 光る玉が、海に落ちたということで、尾道のことを「玉の浦」といい、宝ものの光る玉があったんで、山を「大宝山」寺を「千光寺」というようになったんよ。
 これで、「千光寺の玉の岩」の話はおわりじゃ。
 (参考~尾道民話伝説研究会発行の“尾道の民話・伝説”)

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