尾道市の民話(西国寺の仁王さん)・19

 久しぶりじゃが、今日は仁王さんの話をしようかのう。
 そうじゃのう、今から300年も前の話じゃ、尾道の西国寺ではこの近辺にはないような大きな仁王門を建てたんよ。
 院家さんや檀家の人達は、由緒ある西国寺にふさわしい立派な仁王さんをお迎えしようと、四方八方手を尽くして探しておったんじゃ。
 そんなところへ、京都に有名な仏師が彫った素晴らしい仁王さんがあるという話が伝わって来たんじゃ。
 院家さんはすぐに京へ登ったんじゃ。
 道を尋ねながら探し当てた店の前にデンと構えた仁王さんの出来栄えの見事さは言葉に尽くせないほどであったそうな。
 院家さんは大いに気に入って、たくさんの大判、小判を出してそれを譲ってもろうたんじゃ。

 仁王さんがあまりにも大きいので、陸路尾道へお連れすることはできそうになかったんじゃ。
 そこで、船で淀川を下り、京から大阪へ、そして海路尾道まで運ぶことにしたんよ。

 院家さんが船で待っていると、店の主人が仁王さんをお連れしてきたんよ。
 見ると、さっき店で買った仁王さんと違って、ひどく出来の悪いものじゃった。
 院家さんはビックリ仰天して
 「おや、これは、ご主人どういうことですか、さっき買うた仁王さんとは違うじゃないか。取り替えてくれ。」と言うと、「いいえ、何をおっしゃいます。これが院家さんの買われた仁王さんに間違いありません」
 欲深い主人は、院家さんを田舎者と見くびって、どうしても取り替えようとはしなかったんよ。
 腹が立つやら情けないやら、院家さんは困り果て、思わず「西国寺の仁王さん!船まで来てつかあさい!」と何度も大声を上げて呼んだんよ。
 するとどうじゃろう、あら不思議、遠くの方から「西国寺の仁王はわしじゃ」と雷のような声が聞こえ、ズシンズシンと地響きを立てて、あの仁王さんが歩いてくるではないか。 
 店の主人はビッツクリして、あれを渡してなるものかと、偽の仁王を運ばせた人夫たちに西国寺の仁王さんを押し返そうとしたが、仁王さんは根が生えたようにビクともせんかったんじゃ。
 目を白黒させている主人を尻目に「わしは尾道へ行きたいむと言ったかとおもうと、仁王さん、まるで岩が鳥になったように、ヒラリと船に飛び乗ったんじゃ。
 こうして院家さんは仁王さんと一緒に意気揚々と尾道に帰ってきたんよ。
 
 さて、西国寺では大きな仁王門に立派な仁王さんが入られたんで。盛大に法会をしたんじゃ。
 近郷近在からは、一目この仁王さんを見よう、霊験を授かろうと、毎日たくさんの人がお参りにきたんよ。
 ところがじゃ、しばらくすると大変なことが起こったんじゃ。
 仁王さんは景色のよい尾道が気に入ったんじゃろう。
 夜になると門を抜け出して「尾道はええとこじゃ」と西国寺山をあちこち歩き回るんじゃ。
 あの大きな足でドスンドスンと踏みつけられたもんじゃけぇ、西国寺山は千光寺山や浄土寺山より背が低くうなったということじゃ。
 また、山を歩いたその足でそのまま、賑わう街へと繰り出すようになったんよ。
 街の人達は怖くて外へ出られなくなったんじゃ。
 困ったあげく、西国寺へ出向き
 「院家さん、仏さまをお守りするのが役目の仁王さんが、あぎゃあに毎晩遊び歩かれるのはどういうことじゃ。何とかして貰わんことには外にも出られん」
 と申し入れたんよ。

 院家さんは、毎日のように苦情は聞くし、山は低くなるし、檀家の人達と相談して、仁王さんの足にクサビを打ち、また仁王門に頑丈な格子を打ち付けて、仁王さんが一歩も出られんようにしたんよ。
 
 仁王さんは、本当は遊びに出歩いたんじゃのうて、街の安全を願って、夜回りしてくれていたんじゃ。

 ところで、仁王門の格子というのは、たいてい中程から上は無いんじゃが、西国寺のは仁王さんが出られんようにするためのものじゃけぇ、上までいっぱいに格子が打ち付けられておるんよ。
 (参考~尾道民話伝説研究会発行“尾道の民話・伝説”)

 ということで今日の「西国寺の仁王さん」の話はお終いじゃ。
 

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